概要
シンガポール特許庁が庁費用に関する2通の通知を発行し、2025年9月よりその運用が実施されています。今回はシンガポール特許庁費用の運用変更を紹介します。※日本円はSGD1.00=\120で計算しています。
目次
- 庁費用の改定
- 庁費用返還の試験的導入
1.庁費用の改定
2022年5月以来の庁費用見直しが行われ、一部の項目が改定されました。主な内容は以下のとおりです。
(1)超過クレーム費用に関する変更
特許請求の範囲を簡潔にまとめたクレームセットの提出を促進するため、クレーム数が多めの出願に対して今までより費用が発生するようになりました。
(2)年金費用の変更
不履行特許の解消を促進するため、年金費用(権利回復に伴う遡及年金費用を含む)が値上げされました。

※特許の存続期間を延長する申請が認められた場合に設定された年金費用です。
(3)審査報告に対する再審査請求費用の変更
審査報告書(第29条(4))、調査・審査報告書(第29条(5))、および補充審査報告書(第29条(6))、に対する再審査の請求(PF12B)の費用が、変更前のSGD1,420(\170,400)から、2025年9月1日よりSGD2,150(\258,000)、2026年4月1日よりSGD3,200(\384,000)と2段階で値上げされます。
2.庁費用返還の試験的導入
特許審査ハイウェイプログラム(PPH)の利用拡大を図るため、調査報告書および審査報告書(PF11およびPF12)に対する費用の返還制度が試験的に導入されました。
(1)対象案件
2025年9月15日から2027年12月31日までの間にPPH申請した出願が対象です。2025年9月15日より前に調査・審査報告書/審査報告書の請求をしても、審査が開始されておらず、当該期間にPPH申請していれば適用されます。調査・審査報告書/審査報告書提出の期限延長申請を行った出願にも適用されます。
(2)返還金
PPH申請を行うことにより、調査報告書および審査報告書(PF11およびPF12)費用の30%(調査報告書および審査報告書(PF11)の場合はSGD615(\73,800)、審査報告書(PF12)の場合はSGD426(\51,120))が返還されます。返還は申請日より1~2ヶ月以内に行われる見込みです。
(3)シンガポール特許庁による推奨
シンガポール特許庁はPPH利用のメリットとして、①高い特許付与率(シンガポールではPPH申請の94%が特許付与される)、②迅速なOA発行(通常PPH申請から10ヶ月以内)、③効率性(約70%のFirst OAが許可通知)、を挙げてこれを推奨しています。
