2022年の欧州特許出願統計

概要
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2023年5月
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概要

2022年における欧州特許出願統計が欧州特許庁より公表されました。今回はこの公表された情報に基づき、欧州特許出願の概況について紹介いたします。

目次

  1. 出願件数
  2. 上位出願国(10ヶ国)
  3. 上位技術分野(10分野)
  4. 登録件数の減少

1.出願件数

2022年欧州特許出願件数は193,460件と発表されました。これは前年(確定数値188,809件)との比較で2.5%増でした。2020年に僅かな減少を記録して以来、その後堅調に増加しているようです。ルート別内訳は、通常出願ルートが72,889件(前年比1.1%減)、PCTルートが120,571件(前年比4.7%増)でした。

2.上位出願国(10ヶ国)

上位出願国リストとグラフ
2022年の出願上位10ヶ国は上記のとおりです。国とその順位は昨年から変化はありません。全体的に増加傾向で、特に中国と韓国は急速に伸びています。欧州の中ではトップの出願件数であるドイツは昨年比で4.7%減少しました。これは主に運輸(自動車を含む)、電気機械・装置・エネルギー、有機化学などの分野の減少が影響しています。

3.上位技術分野(10分野)

上位技術分野リスト

技術分野別では、デジタル通信が医療技術を抑え1位でした。米国からデジタル通信と電気機械・装置・エネルギーに関する出願が急増しましたが(それぞれ前年比35%増と20%増)、デジタル通信企業QUALCOMM社による出願(2,966件(前年比93%増)/出願人別3位)が貢献しています。中国からの出願はほとんどの主要技術分野で増加しました。出願人別1位のHuawei社(4,505件)はデジタル・コンピューター・電気関係の技術分野で多くの出願件数を記録しています。

4.登録件数の減少

欧州特許庁は2014年より調査・審査の質を落とさず特許付与の適時性を追求する“Early Certainty from Search”を開始し、登録件数は2016年から増加傾向でした。しかし、2020年から減少傾向に転じ、2022年は前年比24.9%減の81,754件でした。複数の現地代理人に減少傾向の理由を問い合わせたところ、①Office Action発行件数が増加してこの対応を優先したため特許付与が遅れている、②2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大により多くの審査官が在宅勤務を開始し処理滞留が生じている、などのコメントがありました。中には、審査官より非公式に、2023年6月1日より運用が開始されるUnitary Patent(単一効特許)をできるだけ多くの出願人に利用してもらいたいと考えていると聞いており、Rule71(3)の発行が遅れ始めた時期が単一効特許の開始が初めて公表された時期と重なる(出願人のために単一効特許の申請時期を遅らせる目的と推測できる)、とつぶやいている代理人もいました。

登録件数の減少は複数の要因が相互に関係しているように思われます。欧州統一裁判所および単一効特許の運用開始に向けて現状が回復し、再び増加傾向に戻ることを期待しつつ、今後の動向を注視します。