出願人/権利者情報変更の外国特許庁宛一括申請

概要
発行月
2025年5月
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概要

お客様の事業譲渡や吸収合併、または、商号変更や本社移転にともない、外国特許庁に登録されている情報の変更手続きをご依頼いただくことがあります。手続き対象となる案件数が多い場合、一括申請が可能であればお客様の費用負担軽減につながります(基本的に庁費用の割引はありませんが、現地代理人費用は代理人によりボリュームディスカウントを期待することができます)。今回は各国特許庁宛に行う出願人/権利者情報変更の一括申請を紹介いたします。
※ここでの一括申請は、譲渡人/譲受人、または、出願人/権利者が同一である名義変更、名称変更、および、住所変更のいずれか1つについて、特許庁宛に1回の申請で複数案件に関する変更を行うこととします。
※確認した国 : 米国、欧州、中国、韓国、台湾、インド、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、ロシア、カナダ、ブラジル、メキシコ、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、南アフリカ

目次

  1. 一括申請できない国
  2. 一括申請できる国

1.一括申請できない国

インド、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ブラジル、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、南アフリカ

上記国は特許庁の申請システムが1件ごとに処理する仕様のため、一括申請ができません(1度に複数案件を案件ごとに申請することは可能です)。費用について、原則として、庁費用は案件ごとに発生します。例外的に、南アフリカでは名義変更手続きにおいて2件目以降から割引があります(1件目USD5、2件目以降USD2)。現地代理人費用は1件ごとの申請であってもボリュームディスカウントされる見込みはあります。

2.一括申請できる国

(1)一部手続きについて一括申請できる国

米国、ロシア

①米国では、発明者が出願人となりますが、企業は職務発明の場合に発明者から特許を受ける権利を譲り受け出願人となることができます。米国特許庁は出願人と譲受人の情報を分けて記録し、情報変更は譲受人の方について行うのが通例です(出願人情報の変更は別途申請が必要です)。譲受人情報の変更は手続き対象案件リストを提出し一括申請できます。これに対し出願人情報の変更は1件ごとに申請します。登録済案件については譲受人情報の変更のみ必要となります。それぞれの変更のための庁費用は発生しません。
※係属中案件において譲受人情報のみ変更する場合、特許証に表示される出願人情報は変更されません。特許証は当該特許の所有権を必ずしも決定するものではなく、譲受人情報を変更するのみで足りるとする現地代理人見解もあります(譲受人情報と出願人情報の一致が必要な手続き(ターミナルディスクレーマ等)では出願人情報の変更は必須となります)。

②ロシアでは、名義変更手続きにおいて手続き対象案件リストを提出することにより一括申請できるとの情報があります。

(2)名義変更、名称変更、および、住所変更について一括申請できる国

欧州、中国、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、カナダ、メキシコ

①欧州では、欧州特許庁係属中案件に限り一括申請できます。一括申請は原則として手続き対象案件リストの提出が必要ですが、名称と住所の変更については例外的に免除されます。欧州特許庁が2024年に導入した対ユーザーやり取りに利用するプラットフォーム(MyEPO)を利用して手続きを行うと庁費用は発生しません。※欧州においては、出願取り下げについても一括申請できます。

②韓国では、出願人/権利者の情報は特許顧客番号(日本における識別番号)で管理され、出願人/権利者の情報を変更するには特許顧客番号情報変更手続きが必要です。この番号を用いて出願された全ての案件(登録済案件は2008年1月1日以降に登録されたものに限る)の名称と住所の変更は特許顧客番号情報の変更として1回の申請で処理されます。名義変更と2008年1月1日以前の特許登録案件に関する名称と住所の変更は手続き対象案件リストを提出し一括申請できます。庁費用は個別申請と変わりません。

③シンガポールでは、特許庁が出願人ごとに付与した固有のコード(Unique Entity Number)に紐づく全案件の変更について一括申請できます。庁費用は個別申請と変わりません。

④中国、台湾、ベトナム、オーストラリア、カナダ、メキシコでは、手続き対象案件リストを提出することにより一括申請できます。庁費用は個別申請と変わりません。

名義変更についてはタイムリーに、名称変更や住所変更は広域展開予定国において展開前に、それ以外の国は適宜、一括申請を利用して手続きすると費用負担軽減になると思われます