概要
中国では2023年12月に専利法実施細則(政令に相当)及び専利審査指南(審査基準に相当)の改正案が公表されました。施行日は2024年1月20日です。今回は本改正の主な内容について紹介します。
目次
1.電子形式の手続きや通知発行の日付確定について
電子形式の特許庁宛提出書類や特許庁発行通知に関し日付確定方法が明示されました(改正細則第4条)。
- 電子形式で各種書類を指定の特定電子システムに提出する場合、当システムが受領した日付を提出日とする。
- 電子形式で送達した各種書類は当事者が認可する電子システムが受領した日付を送達日とする。
※殆どの書類が電子形式で送達されるため、郵送期間を考慮した15日後の受領推定は事実上廃止されます。(2024年1月20日以降に電子形式で送達される拒絶理由通知等の応答期限に15日は加算されません。)
2.優先権主張に関する救済について
特許と実用新案の優先権主張関連救済措置が新設されました(改正細則第36条、第37条、第128条)。
- 優先権期限内に出願できなかった正当な理由があれば優先権期限から2ヶ月以内に優先権回復請求できる。
- 国際出願日が優先権期限経過から2ヶ月以内かつ国際段階で受理官庁が優先権の回復を承認している場合、中国移行出願において優先権回復請求されたとみなす。国際段階で優先権回復請求せず、又は請求したが受理官庁が承認しなかった場合でも、正当な理由があれば移行日から2ヶ月以内に優先権回復請求できる。
- 優先日から16ヶ月又は出願日から4ヶ月以内に願書に優先権主張の追加又は訂正を行うことができる。
※救済措置を重複適用しない原則に基づき、1つの出願に優先権の回復と優先権の追加・訂正の両方を適用することはできません(改正審査指南)。
3.引用による補充について
優先権主張を伴う特許と実用新案の請求項や明細書の欠陥救済措置が新設されました(改正細則第45条)。
- 請求項や明細書の全部又は一部に欠落や誤記がある場合、出願日から2ヶ月以内又は特許庁指定期限内に先願の書類の援用を申請することでそれらの内容を補充し、かつ当該特許の出願日を保持できる。
※救済措置を重複適用しない原則に基づき、優先権回復、優先権主張追加・訂正により優先権の基礎となった先願の書類は援用できません。また、分割出願も引用による補充を適用できません(改正審査指南)。
※補充により請求項や明細書超過頁の追加料金が発生する場合、出願日から2ヶ月以内又は納付通知日から1ヶ月以内に納付しなければなりません(改正審査指南)。
4.特許権存続期間補償について
特許権存続期間補償制度(専利法42条)の詳細運用が明記されました(改正細則第77条~84条)。
- 特許権者が授権公告日から3ヶ月以内に補償申請と一緒に庁費用を納付しなければならない。
- 「補償期間」=「授権公告日」-「特許出願日から4年又は審査請求日から3年経過した日付のうち遅い方」-「合理的な遅延(審査中止、保全措置、復審手続き、行政訴訟などに起因)の日数」-「出願人による不合理な遅延(指定期限内に通知に応答しなかった、遅延審査申請、引用による補充、権利回復などに起因)の日数」
- 同一出願人が同日に同一の発明について実用新案出願と特許出願の両方を行って特許権を取得した場合、当該特許権は補償の対象外となる。
※「出願日」は特許庁宛手続き日(PCT経由:移行日、分割出願:手続き日)です。「審査請求日」は審査請求料納付日ですが、この時点で未公開の場合は審査請求日ではなく公開日が起算点となります(改正審査指南)。
※申請内容が補償条件を満たさない場合、請求人に申請内容を補正する機会が与えられます(改正審査指南)。
※医薬品特許の権利期間補償(改正細則第80条~84条)について本稿では割愛します。
5.その他
上記のほかに出願人に影響がある点で以下の内容が実施されます(改正審査指南)。
- 実用新案の遅延審査(期間は1年のみ)、及び、特許、実用新案、意匠の遅延審査請求取り下げ申請を導入。
- 日本特許庁等を受理官庁とするPCT経由の中国移行出願において審査請求料割引(約10,000円)を廃止。
- 願書に記載する出願人住所を「国と市(県、州)」から「国のみ」に変更。
※出願人住所が現在と異なる都道府県に変更される場合、2024年1月19日までに出願された案件は中国特許庁への住所変更手続きが必要ですが、2024年1月20日以降に出願された案件は不要となります。