概要
2023年6月1日より欧州単一特許制度(UP)が発効され、欧州特許の一元化がさらに進みました。今回は、欧州主要加盟国ドイツ(DE)、フランス(FR)、イギリス(GB)、イタリア(IT)、スペイン(ES)を対象に欧州指定国、直接出願、およびUP利用について、出願から権利満了(20年間)の費用比較を紹介します。
※固定条件・・・英語明細書:10,000語/請求項:10項/中間応答:2回(欧州特許はサーチレポートとOA2回応答の計3回)、応答1回:\300,000/登録:出願から3年/欧州代理人所在地:ドイツ/€1.00=\170
※現地費用(代理人+庁)のみ記載します(弊所費用も発生しますが差額に大きな影響が無いため省略します)。
目次
- 欧州特許の指定国として権利取得する場合とその国に直接出願して権利取得する場合の比較
- UPを利用する場合とUPを利用しない(各指定国として権利取得する)場合の比較
1.欧州特許の指定国として権利取得する場合とその国に直接出願して権利取得する場合の比較
※FRではPCT直接移行が認められていないため、第1国出願またはパリルートに基づく出願となります。
・DEとFRは直接出願、ITとESは指定国および直接出願において、全文翻訳の費用が発生します。
・FRとITでは審査請求制度がありません。FRは出願人が調査請求すると特許庁は予備調査報告書を発行し、出願人に応答義務が生じます(上記中間応答はこれを含め2回とします)。ITは第1国出願に対して実体審査が行われ、他国を優先権主張するイタリア出願に対しては行われません。PCT直接移行における実体審査は国際調査報告または国際予備審査報告に基づき行われます。
2.UPを利用する場合とUPを利用しない(各指定国として権利取得する)場合の比較
・中間応答まで同一金額のため、登録時と年金の費用に限定して記載しています。
・本稿のUP有効国はDE、FR、ITです。UPを利用する場合、UP有効国4ヶ国目から割安になるのが一般的です。本稿ではDE、FR、ITの他にUP有効国を1ヶ国以上加えるとUPが割安になります。
・英語欧州出願の場合、UP導入の移行期間(6年間)は他のEU公用語の全文翻訳が必要です。最も多く選ばれている言語はES語です。①②③のUP登録時費用はES語翻訳費用を含みます。指定国にESを選ぶとES語翻訳文をUPで流用できます。④のUP登録時費用はES語翻訳費用を含みません。