概要
欧州特許庁が規則を一部改正し、現在実施されているMicro-enterprise(以下、零細企業)の庁手数料減免とは別に新たな減免を2024年4月1日より導入します。今回は欧州特許の新たな減免について紹介します。
目次
1.新しく導入される減免制度
2024年4月1日より導入される零細企業向け減免制度は、現在の減免制度(欧州特許条約締約国に住居または主な事業所を有する出願人が対象のため日本に所在する出願人は利用不可)を補完し、欧州特許制度の利用を費用面で容易にして、小規模で特許出願経験の浅い企業の成長と発展を支援することを目的とします。欧州特許条約締約国以外の国の出願人も利用可能です。
(1)要件は、零細企業、自然人、非営利組織、大学又は公的研究機関が欧州特許出願(国際出願からの欧州移行出願を含む)を提出すること、及び、出願手続き時又はそれ以降に減免を申請することです。
①欧州特許庁が採用する零細企業の定義は、従業員が10人未満、年間の売上高及び/又は貸借対照表の合計が200万ユーロ以下の企業です。
②減免申請者は庁手数料を納付する時点で適格基準を満たしている必要があります。共同出願の場合は出願人全員が適格基準を満たしている必要があります。
(2)効果は、指定された庁手数料の30%減額です(出願日に関係なく2024年4月1日以降の納付に適用)。
①減額対象の手数料と金額は以下のとおりです(€1.00=165.00円)。
※上記は2024年4月1日から適用される新しい金額に基づきます(一部を除き4%ほど値上がります)。
②出願人が減免を申請しない限り手数料は減額されません。出願人は出願手続き以降いつでも減免を申請することができますが、減額は申請日以降に納付された手数料にのみ適用されます。
(3)適用除外事項として、同一の出願人が過去5年以内に5件以上の欧州特許出願を提出した場合、減免は適用されません(減免を申請する出願が過去5年間で5件目であれば減免が適用されます)。
①過去出願の現状(係属中、取下げ、拒絶/特許査定等)や減免対象か否かは減免の適用に影響しません。
②同じ出願人により同日に複数出願が提出された場合は出願番号により順序が決定されます。
(4)注意点
①適格に変更があった場合は欧州特許庁に通知しなければなりません。減免申請後に生じた適格変更は将来にのみ有効であり、納付済の手数料に影響しません。減免適用を受けている出願が譲渡された場合、新しい出願人が適格を満たし、かつ、減免申請をしたときのみ引き続き減免が適用されます。
②欧州特許庁は当該出願の特許登録段階で減免申請者の適格状況を無作為に確認します。欧州特許庁が申請内容に疑義を持った場合、申請者に対して適格を満たしている証拠を要求することがあります。
③出願人が適格を満たしていると誤認して(減免申請の有無に関わらず)減額された手数料を納付した場合、その納付は有効ではなく、欧州特許庁より不足額の納付を要求されてから2ヶ月以内に納付しなければ出願は取り下げられたとみなされます(出願維持年金は追納期間(6ヶ月間)に不足額を納付できます)。
2.弊所での対応
今後出願予定のご案件に関し、本制度適用の可否に迷われるような場合はご遠慮なくお問い合わせください。上述した要件や適用除外事項等の充足を弊所独自で把握することは困難ですので、本制度のご利用をご希望されるお客様におかれましてはその旨を明示的にご指示いただければ幸いです。 以上