2023年の欧州特許出願統計

概要
発行月
2024年7月
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2023年における欧州特許出願統計が欧州特許庁より公表されました。今回はこの公表された情報に基づき、欧州特許出願の概況について紹介いたします。

目次

  1. 出願件数
  2. 各分野ランキング
  3. 登録件数の動向
  4. 単一効特許制度の現在状況

1.出願件数

2023年の欧州特許出願件数は199,275件と発表されました。これは前年(確定数値193,627件)との比較で2.9%増でした。ルート別内訳は、通常出願ルートが76,625件(前年比5.0%増)、PCTルートが122,650件(前年比1.7%増)でした。

2.各分野ランキング

出願件数の多い国TOP 10の件数は概ね増加傾向です(左表)。中でも韓国が件数を伸ばし、フランスと入れ替わりTOP 5入りしました。また、韓国SAMSUNGの出願件数も大きく増加しました(下右表)。同社の昨年比増加件数(1,886件)は韓国全体のそれの86%です。同社は技術分野(下左表)の上位(デジタル通信、コンピュータ技術、及び電気機械等)でもTOP 5に入り、存在感を見せています。一方で、主力製品であるスマートフォンの2023年におけるシェアに関し、米国Apple(出願人ランク17位)とのTOP争いは、欧州では辛勝し首位を守りましたが、全世界では10年以上維持してきたその座を奪われました。最近はスマートフォンに必要不可欠な半導体事業で苦戦しており、今後の出願件数への影響が懸念されます。

 

 

 

 

3.登録件数の動向

2023年の登録件数は前年比28.0%増の104,609件でした(左グラフの赤線部分)。2020年から2022年まで登録件数が減少し続けたことについて、欧州特許庁が2023年6月1日に導入されたUnitary Patent(単一効特許)を可能な限りより多くの出願人に利用してもらう目的で単一効特許の申請期限を遅らせた結果、登録件数が一時的にこの3年間減少したと推測する現地代理人がいました。登録件数が今後増加傾向に転じる場合、この推測もあながち見当違いではなかったように思われます。

4.単一効特許制度の現在状況

(1)単一効特許は制度導入から1年経過の2024年6月1日時点で28,000件以上の申請、27,500件超の登録が行われました。所有者数の上位国は欧州(EPC締約国39ヶ国の合計)が64.2%、続いて、米国16.1%、中国6.0%、日本3.8%、韓国3.3%でした。欧州特許庁は好調なスタートを切ることができたと評価しています。
※最新の詳細情報は下記サイトにアクセスしてご確認ください:
https://www.epo.org/en/about-us/statistics/statistics-centre#/unitary-patent

(2)ルーマニアの単一効特許参加が決定し、2024年9月1日以降に発効する単一効特許は同国含め18ヶ国で保護されます。2024年8月31日までにルーマニアを含む単一効特許を取得したい場合は欧州特許庁宛に単一効を申請する際、2024年9月1日以降に単一効申請が登録されるよう手続き保留を要求できます。