概要
WIPOが2023年におけるPCT出願件数の暫定統計を公表しましたので、PCT出願件数の概況について紹介いたします。
目次
- 総出願件数
- 上位出願国(出願人居住国/15ヶ国)
- 上位出願人
1.総出願件数
2023年のPCT出願の総出願件数は、暫定で272,600件と発表されました。これは前年(277,632件)との比較で、件数にして5,032件、率にして約1.81%の減少となりました。前年比で減少したのは14年ぶりです。
WIPO事務局長Daren Tang氏は、金利上昇と景気動向の先行き不透明感が技術革新への投資手控えに影響しているが、2024年以降はインフレ率低下が予想され、インドや東南アジア等からの出願を中心に出願件数が回復するのではと期待を寄せます。WIPOチーフエコノミストCarsten Fink氏も、金利上昇によるリスク資金減少が技術革新や企業活動の周辺環境悪化を招いるが、出願件数の減少は小さいもので特許制度自体に問題が生じているわけではないとの見解を示しています。
2.上位出願国(出願人居住国/15ヶ国)
上位出願国は左記のとおりです。インドが前年同様急増傾向です。WIPO統計データベースよりインドの出願件数を抽出しました(下記参照)。内訳を見みると、受理官庁がインド特許庁の件数は微増傾向ですが、国際事務局(IB)直接出願はここ2年急増しています。
インドは2023年のIB直接出願件数最多国であり、IB直接出願が急増している国はインド以外ありません。インド代理人はIB直接出願の増加を国内の特許取得推奨の流れによるもので、何か特別な理由があるわけではないとします。この点については、IB直接出願のメリット(出願言語や国際調査機関の選択肢が多い等)との関係の視点でも今後の動向を注視してまいります。
3.上位出願人
上位出願人10社は上記のとおりです。Huawei社は前年より15%以上減少しながら7年連続で1位です。上位10位の半分以上が前年比で減少する中、前年(226件)から大躍進して8位にランクインしたのが中国の電気自動車用の電池メーカーContemporary Amperex Technology社です。世界で電気自動車の普及が進んでおり普及率は欧州諸国が上位を占めていますが、電気自動車市場(販売台数)では中国が世界をリードしています。電気自動車の普及がさらに広がれば、同社の更なる上位進出があるかもしれません。