概要
ブラジル特許庁は2024年12月10日付のOrdinance No.48/2024において、特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムの変更(第5フェーズ)を発表し、2025年1月1日より実施しています。ブラジルのPPHプログラムは開始からフェーズごとにより幅広く利用されるように利用条件の変更が繰り返されてきました。今回はブラジルのPPHプログラムの変遷と最新情報を紹介します。
目次
- PPH開始から第4フェーズまで
- 第5フェーズ
1.PPH開始から第4フェーズまで
(1)ブラジルのPPHプログラムは、2016年1月11日より米国との間で期間を2年間として開始されました。米国出願を優先権主張し、このプログラムの開始時点で出願から3年を経過しているブラジル出願において、優先権主張している米国出願が特許査定を受けた場合にPPH申請が可能でした。
(2)ブラジル特許庁は米国以外の国とも次々とPPH二国間協定を締結してパートナー庁を増やしていきました。また、パートナー庁が優先権主張の元となる出願に特許査定を出し、PPH対象となるブラジル出願のクレームがその特許クレームの範囲を超えないこと、および、当該ブラジル出願が審査請求されているが拒絶理由通知が発行されていないという要件は維持しつつ、受理件数の上限や技術分野などの要件を緩和し続け、ブラジルのPPHプログラムの利用可能範囲を広げて第4フェーズに至りました。主な要件の変遷は以下のとおりです。
※1 PPHプログラム開始から2年、または、米国特許庁とブラジル特許庁のそれぞれの受理件数が150件に至るまでのどちらか早い方で終了とされました。
※2 技術分野の制限が撤廃されたのは2019年12月1日からです。
※3 第3フェーズからPCT出願で発行される国際予備報告書も審査結果として認められるようになりました。
(3)2024年のPPHプログラム(第4フェーズ)申請案件における特許査定率は95.94%、申請日から特許査定までの平均期間は6ヶ月、申請の多い技術分野は、デジタル通信、オーディオビジュアル、バイオテクノロジー、医療技術でした。
2.第5フェーズ
(1)ブラジル特許庁は2024年7月6日付でグローバル特許審査ハイウェイ(GPPH)プログラムへの参加を発表しました。GPPHプログラムは3種類のPPH(通常型PPH、PPHMOTTAINAIおよびPCT-PPH)を利用できる多数国間の枠組みです。GPPHプログラムへの加盟により二国間協定を結んでいる国を含めパートナー庁数は35庁に増加しました。
(2)第5フェーズでは上記(1)の他に、パートナー庁への出願を優先権主張していないブラジル出願に対してもPPH申請を認める大きな要件緩和が行われています。その他の要件に関しても受理件数の上限撤廃や大幅緩和が行われています。第4フェーズまでとの比較内容は以下のとおりです。
※1 2025年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日の各四半期に800件の申請が利用可能になります。受理の有無にかかわらず全ての申請がカウントされます。
※2 IPCH04(電気通信)に分類される特許の申請は2025年第1四半期には受理されません。受理対象から除外される技術分野は四半期ごとに更新される予定です。
(3)申請件数は2025年1月10日時点で79件、1月15日時点で149件です(2024年の同時期との比較でそれぞれ9.7%増、41.9%増)です。現地代理人によりますと、年間受理件数の上限は4倍に拡大されたものの、2024年の年間受理件数は7月までに上限に到達していること、1出願人あたりの申請件数やPCT-PPH申請件数の上限が撤廃されたことから、PPH申請件数が今まで以上に増加すると予想されるとしています。
ブラジル特許庁は今後もPPHプログラムの新たなフェーズを重ね審査の迅速化を推進していくと思われます。毎年1月にPPH関連が発表される傾向ですので、年末年始はこの動向を確認するようにいたします。