ベトナム知的財産法改正

概要
発行月
2026年2月
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概要

ベトナム知的財産法改正案(131/2025/QH15)が国会により承認され、2026年4月1日より施行されます。改正の目的はベトナムにおける知的財産保護の近代化、手続きの合理化、そして執行メカニズムの強化です。今回はベトナム特許法の主な改正内容を紹介します。

目次

  1. 国防および安全保障に関する国内で創設された発明の外国出願
  2. AI関連条項
  3. 委任状の有効期限
  4. 手続き期限/期間の短縮

1.国防および安全保障に関する国内で創設された発明の外国出願

(1)現行法は、ベトナム国内で創作され、ベトナム在住のベトナム人またはベトナム国内法に基づき設立された法人により登録された、①国家防衛および安全保障に影響を与えるおそれのある技術分野に該当する発明は、②ベトナムで既に出願をしている場合に限り外国出願できる、と規定しています(第89a条1項)。
(2)改正法は、下線①を「国家防衛および安全保障に影響を与えるおそれのある技術分野における国家機密に該当する発明」として対象範囲をより限定し、下線②を「国防省または公安省の許可を得た場合にのみ」として第一国出願義務から許可制に変更します。

2.AI関連条項

(1)現行法が規定する知的財産権行使およびその制限(第7条)に、「組織および個人は適法に公表され、公衆がアクセス可能な知的財産権に関するデータを、科学研究、試験、人工知能システムの訓練の目的で使用することができる」旨を新規追加して、AI支援発明が特許取得可能であることを認めます(同条5項/著作者および知的財産権者の正当な権利および利益を不当に害しないことを前提とする但書あり)。
(2)現行法は、「発明、工業意匠または回路配置の創作者は、工業所有権を直接創出した者とする」と規定し、発明者を自然人に限定しています(第122条1項)。改正法はこの条項を方式審査(第109条2項c1)、実体審査(第117条1b項)、および登録証(第96条1項d)のそれぞれの無効事由として新規追加します。これは、AIを発明者と認めない趣旨と解釈されます。

3.委任状の有効期限

(1)現行法は、有効期間の記載がない委任状を①無期限に有効とみなし、②委任者が終了を宣言した場合にのみ終了すると規定しています(第107条3項)。
(2)改正法は、下線①をベトナム民法に従うと修正します。ベトナム民法は有効期間を確定することができない代理(委任)期間を1年とするので(ベトナム民法第140条2項b、第563条)、有効期間の記載がない委任状の有効期間は1年となります。下線②は委任者も受任者も終了宣言により委任を終了できると修正されます。
(3)同条項は個別委任状の他に包括委任状にも適用されます。有効期間の記載がない、または期間が過ぎた委任状はその都度最新版を提出する必要があります。この点に関し、一部の現地代理人より、「当該委任状は作成日から効力を生じ、取消の宣言が行われるまで有効」である旨を記載して都度提出する手間を回避できるという提案があります。しかし、特許庁がこの記載を認めるか不明のため、改正後の実務を注視してまいります。
※2026年4月1日時点で提出済みの有効期間の記載がない委任状は、旧規定の適用を受けて無期限に有効とみなされるという情報がありますが、特許庁から再提出要求があれば対応しなければなりません。

4.手続き期限/期間の短縮

(1)手続きに関する期限/期間が以下のように変更されます。

PCTルート出願、および分割出願に関し、ベトナム特許庁宛出願手続き日が2026年4月1日以降の出願に適用されるとするのが現地代理人の多数見解です。
(2)改正法では、申請により早期審査が可能となり(第119条2a項)、審査請求日と出願公開日の遅い方から3ヶ月以内に早期審査が行われます。出願公開日が2026年4月1日以降の出願に適用されます。