インドネシア特許法改正に関する情報

概要
発行月
2025年1月
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概要

インドネシア特許法が2024年10月28日付で改正されました(旧法№13/2016に対し3回目の改正を行い新法№65/2024として制定)。改正の目的は、特許制度の合理化、特許保護の強化、国際基準への準拠です。現地代理人によりますと、新法制定時点で特許/拒絶が未決定の出願は引き続き旧法が適用されます。新法の実施内容詳細は今後公表される規則および省令において規定されます。現時点で新法が適用される出願/権利への経過措置は公表されていません。今回は現時点で判明している新法の主な改正内容を紹介します。

目次

1.出願段階
2.出願後・中間前段階
3.中間段階
4.登録段階

1.出願段階

(1)発明の定義(旧法第1条2項の変更)

新法は発明の定義について旧法の文言に下線部分を加えました。「発明とは、技術分野における特定の問題の解決のために注がれた発明者の思想であって、物もしくは方法または物もしくは方法の改良および改善の形ならびにシステム、方法、および使用の形を取る。」

(2)発明の対象(旧法第4条 (d)の変更および(f)の削除)

旧法は発明対象外事項に「コンピュータプログラムのみを内容とする規則および方法」と「既存/既知の製品の新規用法および既存化合物」を列挙していますが、新法は前者を「コンピュータで実施される発明を除くコンピュータプログラムのみを内容とする規則および方法」と変更し(下線部分を追加)、後者を列挙から除外しました。

(3)新規性喪失の例外適用期間の拡大(旧法第6条1項の変更)

新規性喪失例外適用期間に関し、旧法は出願日6ヶ月前としますが、新法は出願日12ヶ月前に広げました。

(4)発明者による発明の所有権の宣誓書類提出の廃止(旧法第25条2項(f)の削除)

旧法は出願時提出書類に発明者が当該発明を所有していることを宣誓し署名した書類を列挙していますが、新法はこれを列挙から除外しました。

(5)優先権主張を伴う出願の遅延申請(第30条5項の新設)

旧法は優先権主張出願が優先期限(優先日から12ヶ月)以内にインドネシア特許庁に提出されない場合の救済規定を持ちませんが、新法は優先期限から4ヶ月以内に遅延手数料納付により出願手続きを認めます。

2.出願後・中間前段階

(1)形式要件の庁通知応答期限における延長の減縮(旧法第35条3項の削除)

形式要件を充足しない出願はその要求通知を受け、通知日より3ヶ月以内に要件を充足する必要があります。応答期限延長に関し、旧法は2回認めますが(1回目:2ヶ月、2回目:1ヶ月)、新法は2回目を認めません

(2)出願取り下げ後の再審査請求(第36条 2項および3項の新設)

形式要件充足要求通知に対し期限内に応答しない出願は見做し取り下げ通知を受けます。旧法は救済規定を持ちませんが、新法は通知から6ヶ月以内に出願人が申請と所定手数料納付を行うことにより出願の継続を認めます。新法は第43条の自発的出願取り下げにおいても同様の救済を認めます。

(3)早期公開時期の前倒し(旧法第46条3項の変更)

旧法は早期公開の時期を出願日から6ヶ月後としますが、新法は出願日から3ヶ月後に早めました。

3.中間段階

(1)早期審査の導入(第55条Aの新設)

新法は形式要件を充足した出願につき、出願人が公開前に申請と所定手数料納付を行うことにより早期審査を認めます。審査結果は公開期間(公開日から6ヶ月間)終了後30ヶ月以内に発行されます。

(2)再審査の導入(第63条Aの新設)

新法は拒絶/特許査定、特許付与後の訂正、出願取り下げ決定を受けた出願につき、出願人が決定日から9ヶ月以内(出願取り下げ決定に関し見做し取り下げ以外は2ヶ月以内)に申請と所定手数料納付を行うことにより再審査を認めます。再審査は請求日から12ヶ月以内に承認/却下が決定されます。

4.登録段階

(1)年金納付猶予期間の導入(旧法第126条3項の変更)

旧法は年金納付に関し期限後納付の救済規定を持ちませんが、新法は2回目以降の納付につき自動的に期限経過後6ヶ月間の猶予期間を認めます。出願人は当該年次の納付金額分の追徴金納付を要求されます。

(2)特許実施状況声明書の導入(第20条Aの新設)

新法は特許権者にインドネシア国内における特許実施状況に関し毎年末までの声明書提出を義務付けます

 

今後の情報を注視し、新法詳細を規定する規則および省令が公表され次第続報として紹介いたします。