インド実施陳述書に関するインド特許庁の公式見解

概要
発行月
2024年8月
業務分野
ダウンロード

ダウンロード

概要

インド特許庁は2024年8月26日付で実施陳述書に関する公式見解を公表しました。これは実施陳述書について提出期限を中心とした疑問を解消する目的で行われたものです。今回はこの公表内容を紹介いたします。

目次

  1. 公式見解の公表に至る経緯
  2. 提出期限について
  3. その他の公表内容について

1.公式見解の公表に至る経緯

2024年3月15日施行の改正規則に実施陳述書の運用変更が含まれています。実施陳述書の提出期限に関し複数の解釈が成り立ち得るため(詳細は2024年6月の外国特許トピックス参照)、複数のインド代理人がインド特許庁に公式見解を求めました。インド特許庁は2024年7月29日にインド代理人および関係機関等と意見交換を行い実施陳述書に関する疑問点を集約し、そしてこのたび公式見解を公表しました。

2.提出期限について

  1. 実施陳述書は、特許が付与された直後の年度から3年度分の実施状況を、最終年度終了後6ヶ月以内に1回(3年度分を1つのフォーマット(Form27)に一括記載して)提出する必要があります(規則131(2)前段)。新規則は2024年3月15日より施行され、3年度分の期間は将来に向かって適用されます。旧規則下で提出すべき2022年度分までの実施陳述書が未提出の場合、これを新規則に基づいて提出することはできません。
  2. 具体的例は以下のとおりです。
    No. 特許登録となった期間 実施陳述対象期間 提出期限
    1        ~2022年3月31日 2023年4月1日~2026年3月31日 2026年9月30日
    2 2022年4月1日~2023年3月31日 2023年4月1日~2026年3月31日 2026年9月30日
    3 2023年4月1日~2024年3月31日 2024年4月1日~2027年3月31日 2027年9月30日
    4 2024年4月1日~2025年3月31日 2025年4月1日~2028年3月31日 2028年9月30日
  3. 失効した特許については以下のとおりです。
    No. 失効した期間 実施陳述対象期間 提出期限
    1 2023年4月1日~2024年3月31日 2023年4月1日~2024年3月31日 2024年9月30日
    2 2024年4月1日~2025年3月31日 2023年4月1日~2025年3月31日 2025年9月30日

    ※失効した特許に関するインド特許庁の公式見解に対し、多数のインド代理人は以下のように解釈しています。
    ・失効原因(権利満了や年金未納等)によらず特許が年度の一部期間でも有効であれば実施陳述書を提出する。
    ・失効した特許の未提出分は(新規則に基づいた提出期限によらず)失効直後の年度の9月30日に提出する。

  4. 提出期限の延長について
    実施陳述書の提出期限は、規則131(2)後段による最長3ヶ月(10,000ルピー(約17,200円)/月)、および規則138条による最長6ヶ月(50,000ルピー(約86,000円)/月)の合計9ヶ月の延長が可能です。例えば、2026年9月30日の提出期限は最長で9ヶ月後の2027年6月30日まで延長が認められることがあります。

3.その他の公表内容について

  1. 関連する複数の特許が同じ特許権者に付与された場合、1通の実施陳述書にまとめて提出できます。
  2. 複数の利害関係者(特許権者やライセンシー等)は同じ特許に関する実施陳述書を別々に提出できます。
  3. 実施陳述書を提出しない場合、The Jan Vishwas (Amendment of Provisions) Act, 2023に基づき罰則(①未提出に対し100,000ルピー(約172,000円)以下、未提出日数分に対し1,000ルピー(約1,720円)/日の罰金、②虚偽陳述に対し当該者の監査済み会計で算出された事業の総売上高または総収入の0.5%相当額または50,000,000ルピー(約86,000,000円)のいずれか少ない方の罰金)が科せられます。
    ※弊所管理案件において罰則を受けた過去実績は無く、他の案件でも罰則を受けた情報は把握していません。

【弊所の運用について】

上記の公式見解を踏まえ、毎年度の対象案件を弊所にて確認し、実施陳述書の提出期限の数ヶ月前に提出要否を照会いたします。2024年9月30日が提出期限となる、2023年度に失効した弊所管理案件については直ちに確認し、別途ご案内いたします。

年金管理移管等により弊所管理を終了している案件において弊所経由で提出をご希望の場合は、提出期限までにご連絡ください。

【続報】

失効した特許に関するインド特許庁の公式見解に対し、失効原因(権利満了や年金未納等)によらず特許が年度の一部期間でも有効であれば実施陳述書を提出するというのがインド代理人の多数見解と紹介しました。その後、一部インド代理人がインド特許庁に対し公式見解中で使用した”expired”(失効)は権利満了に限ることを確認しました。これに従うと、年金(累積年金含む)未納による失効の場合、実施陳述書は提出不要となります。