各国の庁費用に関する運用変更や新たな特許制度の導入について

概要
発行月
2024年10月
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概要

シンガポール、オーストラリア、およびアルゼンチンより庁費用の運用変更や新たな特許制度の導入に関する情報が届きましたので、今回はこれらの内容を紹介いたします。

目次

  1. シンガポールの審査請求期限延長に係る庁費用の時限的免除
  2. オーストラリアの庁費用の一部運用変更
  3. アルゼンチンの情報提供を要求する通知

1.シンガポールの審査請求期限延長に係る庁費用の時限的免除 【2024年10月4日時点 1SGD≒113円】

(1)シンガポール特許庁は、審査請求期限が2024年9月1日から2026年8月31日の間に到来する出願について、その期限延長に係る庁費用(SGD200/1ヶ月)を最大で認められる18ヶ月まで免除する試験的な取り組みを開始しました。対応国の審査結果を待つなど出願人が権利化に向けた検討時間を費用負担なく確保できるようにすることが目的です。詳細情報は以下のとおりです。

①対象案件が審査請求されても特許庁が審査未着手の場合、出願人は審査請求を取り下げて庁費用免除の延長申請を行うことができます。
②対象案件が今回の取り組み開始前に18ヶ月未満延長されている場合、出願人は18ヶ月までの残りの期間について庁費用免除の延長申請を行うことができます(既に申請済みの延長費用は免除(返金)されません)。
③庁費用免除の延長は、審査請求期限を延長した結果として上記期間に含まれる出願には適用されません。
④出願人は、審査請求期限から18ヶ月以内であれば庁費用免除の延長申請を行うことができます。
⑤庁費用免除の延長は、(下記(3)の国内①ルートの)調査請求には適用されません。

(2)【参考情報】日本の出願人が主に利用できるシンガポール(SG)の調査請求/審査請求は以下の3つです。

ルート 調査庁 審査庁 庁期限(最先の出願日から) 調査/審査請求に係る庁費用
調査請求 審査請求 最大延長
国内① SG SG 13ヶ月 36ヶ月 54ヶ月 SGD3,155

21クレーム以上は超過費用(SGD40/1クレーム)が発生

国内② SG SG 36ヶ月 36ヶ月 54ヶ月 SGD2,050
混合 SG以外(※) SG 36ヶ月 54ヶ月 SGD1,420

※SG以外は特定国(オーストラリア、カナダ、日本、韓国、英国、米国、欧州、ニュージーランド(カナダと欧州は英語出願のみ))に限られています。混合ルートではPCT出願の国際調査報告を利用することもできます。

2.オーストラリアの庁費用の一部運用変更 【2024年10月4日時点 1AUD≒100円】

(1)オーストラリア特許庁は、4年に1度の庁費用見直しを行い、2024年10月1日より新運用を開始しました。大きな変更点はクレーム超過費用(※)の納付時期です。超過費用は許可通知発行時に21クレーム以上ある出願に対して発生し、登録料と一緒に納付されます。2024年10月1日以降に審査請求した出願より、最初の拒絶理由通知発行時に21クレーム以上ある出願に対して超過費用納付要求通知が別途発行されます。この通知発行から1ヶ月以内に超過費用を納付しなければ、当該出願は失効します。詳細情報は以下のとおりです。

①出願人は、審査開始前にクレーム数を減らす補正が可能です。
②審査官は、出願人が最初の拒絶理由通知に応答しても超過費用を納付しない限り応答内容を検討しません。
③出願は、超過費用未納により失効しても最初の拒絶理由通知発行から12ヶ月以内に納付すれば復活します。
④審査過程で超過クレームが発生しその分の費用が未納の場合、未納分の費用は登録料と一緒に納付します。
※超過費用は、21~30クレームがAUD125/1クレーム、31クレーム以上がAUD250/1クレームです。

(2)庁費用値上げもありました。主な内容は以下のとおりです。(費用項目:値上げ後の金額(値上がり分))

出願:AUD400(AUD30増) 審査請求:AUD550(AUD60増) 登録:AUD300(AUD50増)

3.アルゼンチンの情報提供を要求する通知

(1)アルゼンチン特許庁は2024年8月26日付で、今後発行する優先権主張の基礎となる先の出願に関して情報提供を要求する通知に対し、出願人が指定期限内に応答しなければ、当該アルゼンチン出願を放棄したと見做すことを発表しました。出願人が権利化を断念したアルゼンチン出願を審査対象から除外し、特許庁内に生じている審査滞留を解消する目的です。詳細情報は以下のとおりです。

①対象は、パリ条約に基づき優先権主張し、審査請求費用納付や審査状況と関係無く出願係属中の案件です。
②要求される情報は、優先権主張の基礎となる先の出願に対して特許査定が出たか否かです。
③応答期限は、通知発行日から60日以内です。この期限の延長はできません。

(2)本制度の目的から、優先権主張の基礎となる先の出願が拒絶査定や放棄となっていても当該アルゼンチン出願への影響はないと考えられています。特許庁内の審査滞留が解消されれば、この通知は発行されなくなる可能性があると推測する現地代理人もいます。