概要
ある外国特許案件で許可通知発行にともない登録料が納付されましたが、その直後に分割出願を行うことになりました。現地代理人が許可通知発行時の連絡において分割出願は登録料を納付する前までに手続きする必要があると伝えてきていましたが、実際は特許付与されるまで分割出願を行うことができることが判明し、無事に分割出願されました。これを機に他の国の分割出願の最終期限を確認しましたので、今回は特許査定となった案件に限定して、自発的な分割出願の最終期限を紹介します。
目次
- 分割出願の意義
- 特許査定となった案件において自発的な分割出願を行うことのできる最終期限
1.分割出願の意義
特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願に分割することを分割出願といいます。分割出願の趣旨は特許出願の明細書、特許請求の範囲または図面に含まれているすべての発明について別出願として特許を受けることができる点にあります。特許出願の明細書等に含まれている発明をより手厚く保護する観点から、特許査定または拒絶査定後の一定期間、分割出願を可能とする必要があります。
2.特許査定となった案件において自発的な分割出願を行うことのできる最終期限
最終期限は各国により細かい点で異なります。大枠で以下の時系列の順番に並べてみました。
(1)分類1の国の補足
- タイでは出願人は自発的に分割出願を行うことはできません。分割出願を希望する場合、審査が完了するまでに特許庁宛に分割出願を希望する説明書を提出し、審査官がこれに同意することを条件に可能となります。
(2)分類2の国の補足
- 韓国は許可通知発行日から3ヶ月後が最終期限ですが、登録料納付後は分割出願できません。
(3)分類3の国の補足
- 中国は許可通知受領日から2ヶ月、台湾とオーストラリアは許可通知発行日から3ヶ月が最終期限ですが、この期間内であれば登録料納付後も分割出願できます。
- マレーシアは最初の審査報告書発行日から3ヶ月が最終期限です(登録料納付は要求されません)。
(4)分類4の国の補足
- インドとインドネシアは事前に通知なく特許付与通知が発行されます。両国とも分割出願の最終期限を事前に認識することが困難ですので、分割出願は拒絶理由通知応答時に行うことを推奨します。
- ロシアは国家登録簿に登録される日(特許付与日)の前日まで分割出願が可能です。登録料納付後2週間(早いと2~3日)ほどで国家登録簿に記載されますので、分割出願は特許料納付時に行うことを推奨します。
(5)分類5の国の補足
- 米国は特許証発行前日まで分割(継続)出願が可能です。電子特許証発行開始により特許番号通知発行から特許証発行までの期間が早まる見込みですので、分割出願は特許料納付時に行うことを推奨します。
(6)分類6の国の補足
- ブラジルは審査手続きの終了が最終期限です。審査終了は、①特許性に関する最終的な報告の日、または、②付与決定の公表、拒絶もしくは確定的棚上げのうち、いずれか後に生じた日の30日前とされます。
- メキシコは2020年11月5日に法改正があり、改正前の出願は許可通知発行前日まで(分類1)、改正後の出願は許可通知受領日から2ヶ月が最終期限ですが、登録料納付後は分割出願できません(分類2)。
- フィリピンは2022年9月に規則改正があり、特許付与日から4ヶ月が最終期限となりました。