概要
お客様より発明者に関連するご質問を受け、これを各国代理人に問い合わせて回答を得ることがあります。今回は発明者に関するお客様からのご質問事項とこれに対する各国の回答結果をまとめたものを紹介します。
目次
- 発明者が対応を要求される事項
- 発明者の情報の変更/発明者自身の変更(追加および削除)
1.発明者が対応を要求される事項
(1)日本では、権利化に向けた特許庁宛手続きにおいて、発明者に対応を要求することは基本的にありません。一方、外国では、発明者が出願人ではない場合、特許を受ける権利を出願人へ譲渡する旨の書類(譲渡証)に署名し、出願手続きの際に提出することが要求される国があります。該当する国は以下のとおりです。
アラブ首長国連邦、カナダ(※1)、インドネシア、インド(※2)、メキシコ(※3)、サウジアラビア、タイ、米国(※4)、南アフリカ
※1 有効なカナダ特許出願日以降に譲渡された場合など特定状況においては譲渡証の提出が推奨されますが、特許法上は必須とされておらず、現地代理人により提出要否の判断は分かれています。
※2 所定の様式(Form 1)を使用しますが、例えば米国特許庁に提出された同じ趣旨の譲渡証の認証謄本も代替書類として認められるという情報があります。
※3 PCTルート出願において国際公開公報と出願人が一致している場合など、権利帰属が明確な場合は提出不要とされます。
※4 譲渡証と宣誓書(発明者自身がクレームされた発明の発明者である旨等を陳述)が併合された様式を使用することが一般的となっています。また、米国の場合は譲渡証の提出は出願時に限られません。
(2)後述する発明者自身の変更がある場合、該当発明者、あるいは、発明者全員が署名した申立書を提出する必要があります。申立書(これに類する書類含む)への発明者による署名が求められない国は以下のとおりです。(日本も発明者相互の宣誓書を提出しますが宣誓書への押印(外国人の場合は署名)は不要です。)
アルゼンチン(※5)、マレーシア、シンガポール
※5 出願人が用意する書類はなく、現地代理人において作成し提出します。
(3)発明者の署名を得ることができない場合、例えば、発明者が死亡した場合、相続人、発明者の法定代理人、または(遺言がある場合は)遺言執行者が代わりに署名することができます。発明者と連絡が取れない、または、発明者が署名を拒否している場合、雇用契約書、あるいは、署名を得ることができない旨の宣誓供述書を提出することで手続きを進めることができます。これらの点については概ね各国において共通です。(具体的な状況により実際に提出を要求される書類は異なります。)
2.発明者の情報の変更/発明者自身の変更(追加および削除)
(1)日本では、発明者の補正(発明者情報の誤記訂正および発明者自体の変更)は係属中案件にのみ認められます。外国では、提供された発明者情報に変更や誤記があった場合、その内容を特許庁宛に更新、あるいは、訂正手続きすることの要否につき、審査、権利化、および、権利維持や権利行使に影響を与えるものではなく、これを義務付ける規定もないという点で各国共通していますが、特許庁に登録された情報を最新にして現状との整合性を図ることが望ましく、特に誤記訂正においては更新を推奨するという現地代理人見解が多数です。
(2)発明者の追加および削除のタイミングについて、係属中と登録済とで扱いが異なる国は以下のとおりです。
カナダ(※6)、中国(※7)、韓国(※8)、メキシコ(※9)、サウジアラビア(※10)、タイ(※10)、ベトナム(※11)
※6手続きは係属中においては特許庁宛に、登録後においては連邦裁判所宛に行われます。
※7出願日が2024年1月20日以降の場合は出願受領通知の受領から1ヶ月以内に行う必要があるため、登録後において発明者自身を変更する機会は事実上ありません。
※8 発明者の署名について、係属中は該当する発明者のみ、登録後は全発明者の署名が必要となります。
※9 登録後の手続きに対する制限が厳しいため、係属中での手続きが推奨されています。
※10 登録後の手続きは認められていません。
※11 登録後は特許証原本の提出が必要となります。
(3)旧姓と新姓について
日本では、特許庁宛手続きの氏名欄に旧姓と新姓の併記を認めることになりました。これに対して、外国では、PCTルートの場合は国際段階と一致する必要がある、また、非PCTルートの場合は現在の戸籍上の姓を記載する必要があるため認められないとする国が多数です。一部の国(アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、カナダ)では併記が可能という情報がありますが、その場合は、PCTルートだと国際事務局よりその旨を認める通知を、非PCTルートだと当該発明者を特定するため戸籍謄本を添えて申請する必要があるとのことです。