【情報更新2026年版】特許証原本の扱い

概要
発行月
2026年8月
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概要

特許証原本を破棄した場合の問題点につきまして、前回の2023年から電子特許証の発行国が増えました。今回は、弊所が2024年から現在まで特許証を受領した案件の中において今まで紹介していない国を含めて、特許証発行に関する各国の状況を情報更新・追加して紹介いたします。
※赤文字の国は、本稿にて新たに特許証発行方法の状況等を確認しました。

目次

  1. 特許証を紙で発行する国
  2. 特許証を電子データで発行する国

1.特許証を紙で発行する国

(1)破棄しない方が良いとする国 : 
タイ、マレーシア、ベトナム、バングラデシュ、スリランカ、オマーン、アルジェリア、ケニア
タイでは、特許証の表紙を紙発行し、書誌情報や明細書等は表紙に印字してあるQRコードからダウンロードします。この原本は特許訴訟等に必要となること、原本を破棄した場合の再発行手続きが非常に煩雑(警察へ届出てその報告書の提出が必要)であるため、破棄せず保管することを強く勧められています。マレーシアでも特許証の表紙を紙発行し、書誌事項や明細書等は電子発行されます。タイのように特許証再発行の煩雑性はありませんが、特許訴訟等で原本提出が要求される可能性があることを理由に原本保管が推奨されています。バングラデシュ、スリランカ、オマーン、アルジェリア、ケニアも同様の理由で原本保管が推奨されています。

ベトナムでは、2023年より出願時に特許証の紙発行希望を確認する運用が始まり、2026年4月の法改正で知的財産管理のデジタル化を促進する目標が掲げられましたが、特許庁内での準備が進んでおらず、現時点で電子発行に至っていません。登録後のクレーム・明細書の補正(誤記や誤植の訂正等)や特許権者情報の変更(名称、住所、権利移転など)の手続きにおいて原本が必要となるため、原本保管が推奨されています。特許証再発行に関し、特許庁が特許証の再発行を含む特定の行政手続きを省レベルの人民委員会へ移管したため、比較的複雑で時間を要するものとなっていることにも注意が必要です。

(2)破棄しても問題ないとする国 : 
ドイツ、イギリス、オランダ、エジプト、パキスタンナイジェリアトリニダード・トバゴ
これらの国では、特許権は特許庁の公式記録や登録簿情報によりその存在が証明される(certified copyの発行が認められているのは原本が唯一無二ではないことを裏付けている)こと、および、特許証原本はあくまで象徴的な存在にすぎない、等の理由から、特許証原本を破棄しても問題ないとしています。

2.特許証を電子データで発行する国

米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、コロンビア、ペルー、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、中国香港韓国台湾シンガポールフィリピンインドネシアインド湾岸協力会議(GCCサウジアラビアアラブ首長国連邦、カタール、クウェート、ユーラシア特許、ロシア、ウクライナ、イスラエル、欧州、ノルウェー、スウェーデン、フランス、スイス、イタリア、スペイン、チェコ、トルコ南アフリカ、ARIPO(アフリカ広域知的所有権機関)OAPI(アフリカ知的所有権機構)

青文字の国は、前回の2023年版において紙発行と紹介しましたが、現時点で電子発行を開始しています。
欧州では、欧州特許庁が開設したMyEPO Mailboxを欧州代理人が利用している場合は電子発行されます。2027年4月1日以降は欧州特許庁とのやり取りがMyEPO Mailboxによることが標準的な方法となるため、これにともない特許証も全面的に電子発行に移行される見込みです。欧州統一特許(Unitary Patent)に対し発行される登録証はすでに電子発行されていますが、こちらも上記日付から全面電子発行となります。

イスラエルでは、紙と電子の両方で特許証を発行する運用となりました。紙の方はあくまで印刷物に過ぎず、実質的に原本とされるのは電子の方になります。香港は2024年より電子発行を始めました。紙発行を希望する場合は当該特許の付与公告通知日から2週間以内に登録局へ書面で請求を行う必要があります。

南アフリカでは、2026年1月以降に付与された特許に対して電子特許証の発行を開始しました。電子特許証にはデジタル署名、電子印章、およびQRコードといったセキュリティ機能が組み込まれています。認証済みの電子特許証は1回のみダウンロード可能ですが、非認証コピーはダウンロード回数に制限はありません。

インドネシアでは、2026年7月16日以降に付与された特許において特許証の電子発行が行われています。知的財産関連サービス効率化を推進するインドネシア政府の継続的施策の一環として電子発行が始まりました。特許証原本の破棄を勧めない国からの大きな方向転換であり、他の国も早期にこれに続くことを願います。

※現在特許証を電子発行している国でも、紙発行期に原本保管を推奨していた国の中には、過去の紙特許証を引き続き保管することを推奨する国(上記ではインドネシアとスペイン)もあるので、注意が必要です。