概要
名義変更、名称変更、または住所変更手続きを1つの国において1つの現地代理人に一括依頼する場合、出願代理人として登録されている現地事務所以外の事務所が手続きするケースが生じ得ます。国によっては、手続きした現地事務所がその出願/権利の代理人となってしまう(代理人変更が生じてしまう)ことがあります。代理人変更により、特許庁からの連絡の送達先住所が変更されます。代理人変更をしたくない出願人/権利者は元の現地事務所を代理人に登録し直す手続きを行うことになります。今回は、名義、名称、または住所の変更手続きを出願代理人以外の現地事務所が行う場合に、代理人変更が生じる/生じない国を紹介します。
※代理人変更が生じる/生じないを問い合わせた国:
中国、韓国、台湾、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、欧州、ドイツ、イギリス、フランス、ロシア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、インド、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、南アフリカ
目次
- 代理人変更が生じる国: 中国、マレーシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦
- 代理人変更が生じない国: 米国、カナダ、欧州、ドイツ、フランス、イギリス、オーストラリア、シンガポール
- 場合により代理人変更が生じる国
1.代理人変更が生じる国: 中国、マレーシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦
これらの国は、当該案件の出願代理人として登録されている現地事務所以外の事務所が名義、名称、または住所の変更手続きを行うと代理人変更が生じます。マレーシアにおいては、2022年の改正特許法および改正特許規則により、Form 17(弁理士の選任)を提出した現地事務所が代理人として全ての事項を委任されることになります(名義、名称、または住所の変更手続きに限定された委任状は認められません)。
2.代理人変更が生じない国: 米国、カナダ、欧州、ドイツ、フランス、イギリス、オーストラリア、シンガポール
これらの国は、当該案件の出願代理人として登録されている現地事務所以外の事務所が名義、名称、または住所の変更手続きを行っても代理人変更は生じません。ドイツにおいては、手続きを行う現地事務所が出願代理人に対して手続きを行うことの同意を求める必要があります(この同意はメールなど簡易なもので足ります)。米国において、出願代理人以外の者が出願人情報(ADS)の更新を行う場合も、代理人変更は生じません。
3.場合により代理人変更が生じる国
(1)手続きにより異なる国: 韓国
①名義変更について、係属中案件は、名義変更のみ指定されている委任状を使用すれば、代理人変更せずに手続きが可能です。他方、登録済案件は、全部譲渡の場合、包括的委任状、または(委任事項が名義変更のみに限定されたものを含めた)個別委任状のいずれが使用されても、手続きした現地事務所に代理人変更されます。これに対して、一部譲渡(単独名義から共同名義に変更されるなど)の場合は、代理人変更せずに手続きが可能です。
②名称変更・住所変更については、代理人変更せずに手続きが可能です。
(2)案件状況により異なる国: インドネシア
係属中案件は手続きした現地事務所に代理人変更されますが、登録済案件は委任状があれば、代理人変更せずに手続きが可能です。
(3)委任状があれば代理人変更が生じない国: インド、ベトナム、南アフリカ、アルゼンチン、台湾、ロシア
これらの国は、当該案件の出願代理人として登録されている現地事務所以外の事務所が、委任状に基づき名義、名称、または住所の変更手続きを行った場合は代理人変更が生じません。インドにおいては、委任状に基づいて手続きを行っても、特許庁より送達宛先を自身に変更する申請を行うよう求められる場合があります。登録済案件では手続きを行った現地事務所が送達宛先に自身を追加できますが、係属中案件ではできません。
(4)判断が難しい国: ブラジル、メキシコ、フィリピン、タイ
これらの国は、各国において複数の現地事務所に問い合わせましたが、収集した情報に違いがあり、何れが正しいものかを確認するための情報を入手することができませんでした。代理人変更を生じさせたくない場合は手続きを依頼する際に現地事務所に確認したほうがよさそうです。
各種手続きを1ヶ国1現地代理人に一括依頼する場合、国ごとに連絡系統が一本化される上、現地事務所の費用もボリュームディスカウントを期待できるため、有効な手続きの進め方の一つと思われます。他方、当該案件の出願代理人ではない現地事務所はその案件に対する理解が浅く、機械的に手続きを行うことが想定され、個別案件の特殊事情を考慮した対応は期待できません。さらに、出願代理人以外の現地事務所が手続きを行うことで、出願代理人における案件の情報管理に混乱が生じる恐れもあります。これらの状況は各国からの窓口の役割を担当する国内代理人にも同じく当てはまることがあります。各種手続きを一括依頼する予定の場合は、手続き内容や案件の事情を考慮したうえで進めることを推奨いたします。