米国特許庁が開始した実体審査前段階のパイロットプログラムについて

概要
発行月
2026年6月
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概要

米国特許庁は、2026年4月9日よりPCT Informed Examination Request (PIER)、また、5月29日よりPre-Docketing Noticeの試験的導入を開始しました。今回はこれらパイロットプログラムの概要を紹介します。

目次

  1. PIER
  2. Pre-Docketing Notice

1.PIER

(1)意義と趣旨
PIER は、2026年4月9日から2027年4月9日の間、米国特許庁が未審査のPCT移行出願の中から一定数の出願を随時選び、出願人に対して国際段階の成果物を考慮の上審査継続の要否回答を義務付ける通知を発行し、出願件数および効率性への影響を評価することを目的とした試みです。
※本プログラムは、米国特許庁の判断で期間延長あるいは途中終了することがあります。また、米国特許庁は出願人からの参加、棄権、または除外の申し立てを認めません。
※審査期間が長く、実体審査がすぐに開始される可能性が高い技術分野や案件、特に国際段階の作業成果物においてXまたはYの文献が引用されている案件が、重点的に選定されます。

(2)出願人が対応すべき内容
出願人は国際段階の成果物(国際調査報告、国際調査機関による見解書、および国際予備報告など)を基に、①審査を進める、②審査を延期する、③出願を放棄する、のいずれか1つを通知日より2ヶ月以内に回答する必要があります(通知から最大6ヶ月まで延長可能)。期限内に回答しない場合は出願放棄したとみなされます。
※上記①を選択した場合、出願人は予備補正書を提出することもできます。
※上記②を選択した場合、米国特許庁が回答を受領した日から12ヶ月間審査が延期されます(期間短縮不可)。この審査延期は特許期間調整(PTA)において「出願人に起因する遅延」として扱われます。
※上記③を選択した場合、米国特許庁は、手続き処理の円滑化を理由に出願人が署名した明示的放棄宣誓書の提出を推奨していますが、現時点で米国代理人からは提出要求を受けていません。③を選択して出願時に納付した調査手数料および超過請求手数料の返還を受けるには、明示的放棄宣誓書の提出が必要です。
※回答に使用する所定フォーマットにおいて、①②③のチェックボックスを複数選択した回答は無効となります。
※①を回答すると、出願は審査官の担当リストに登録されます(②の場合は延期期間満了後に登録されます)。

2.Pre-Docketing Notice

(1)意義と趣旨
Pre-Docketing Noticeは、米国特許庁が係属中の非仮特許出願に対し、出願が実体審査のために審査官に割り振られる予定日の約3か月前にその旨を知らせる通知です。出願人に対し、審査開始時期に近い段階で事前通知を行うことが、出願人の意思決定、出願書類の管理、審査の質と効率にどのような影響を与えるかを評価(例えば、審査開始直前の予備補正が審査効率向上につながるかを評価)することを目的とした試みです。
※弊所管理案件において、現時点で本通知発行から1st OA発行まで10日ほどのケースが数件ありました。

(2)出願人が対応すべき内容
本通知に対する応答は不要です。出願人が何も対応を取られなければ、出願は通常どおり審査に進みます。出願人は、発明者や出願人名義などの情報を確認して必要に応じて更新手続きを行う、または、今後の審査を円滑に進め予見可能な拒絶を回避するために予備補正書または情報開示書を提出するなど、出願内容の整理を行うことができます。あるいは、権利化が難しいと判断する場合は、明示的放棄申請書を提出することにより、出願時に納付した費用(調査および超過クレーム)の返還を受ける可能性もあります。
※お客様より、本通知が応答不要であることを理由に、お客様宛送付は不要とご連絡をいただくことがあります。米国代理人からも同じ理由で転送の要否確認を受けることもあります。弊所は米国代理人より本通知を受領した場合、お客様から送付不要のご連絡をいただかない限り、原則としてお客様に送付いたします。

米国特許庁は、これらのパイロットプログラムにより、審査対象を出願人が本当に権利化を目指す出願に絞り、円滑な審査を目指しています。これは、審査請求制度の目的(①出願人に出願後も権利化の必要性を検討する猶予期間を与える、および、②特許庁の審査対象案件を限定する)の特に特許庁側の視点(②)と一致します。米国国内でも審査請求制度の導入に関する議論はあるようですが、米国特許庁が審査請求を導入しない理由を米国代理人に尋ねたところ、「出願された発明は全て審査をしなければならない」(特許法第131条)の規定に尽きるとの回答でした。現時点で米国特許庁がこの方針を変更するという情報はありません。導入するとなると、出願時に調査手数料と審査手数料を徴収する慣行の変更など連動して他の重要な運用変更も必要となります。今回のパイロットプログラムの結果を受け、米国特許庁が今後どのような方針をとるのか注視してまいります。