【情報更新2023年版】特許証原本の扱い

概要
発行月
2023年12月
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概要

特許証原本を破棄した場合の問題点につきまして、今年から新たに電子特許証を発行する国の情報、および、今年弊所が特許証を受領した案件の中で今まで紹介していない国の情報を確認しました。今回は特許証発行に関する各国の状況を情報更新・追加して紹介いたします。

目次

  1. 特許証を紙で発行する国
  2. 特許証を電子データで発行する国

1.特許証を紙で発行する国

(1)破棄しない方が良いとする国 : 

タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム

タイは特許証を表紙1枚のみ紙で発行します。この紙に書誌情報や特許明細書などのデータをダウンロードするための QRコードが表示されています。特許証は特許訴訟やライセンス契約の際に必要なため、破棄せず保管することが勧められています。

マレーシアとインドネシアは特許証を紙でのみ発行します。特許訴訟や権利行使などで特許証原本の提出が要求されることを理由に原本の保管が推奨されています。一方で、特許庁が発行する特許証謄本が原本に代替できるので破棄のリスクは無いとする現地代理人もいます。安全サイドに立つ場合は原本保管を推奨します。

ベトナムは2023年8月23日より出願時に提出する願書に紙の特許証発行を希望する場合は所定箇所に✔を入れる運用を導入しました。しかし、ベトナム特許庁は運用開始時点で電子発行対応ができておらず、また、この運用に関するガイドラインなどが公表されていないため、現地代理人を含め関係者には戸惑いがあります。このためか、弊所案件において運用開始以降の願書を確認したところ、出願人の意向を確認せず紙発行に✔が入っており、実際は紙発行が維持されています(一部現地代理人から紙発行の要否問い合わせがあり出願人が電子発行を希望した案件は✔が入っていません)。現状で入手した情報によりますと、電子で発行される特許証は紙と同等の有効性を持ち、いずれの場合も発行費用は発生しません。今後の動向に注目してまいります。

(2)破棄しても問題ないとする国 : 

欧州、ウクライナ、ARIPO(アフリカ広域知的所有権機関)、ドイツ、イギリス、オランダ、イスラエル、南アフリカ、エジプト、香港

赤文字の国は弊所が本年において紙および電子データの特許証を受領した国です。現地代理人によりますと、特許証原本を破棄しても特許権の有効性に影響なく、特許証の提示要求があった場合は特許証の電子コピーまたは特許庁発行の特許証謄本で代替できるとのことです。

香港では登録日から最初の年金納付日までの間に裁判所に対し特許権付与を証明する必要が生じた場合、特許証原本の表紙(色付き頁)と2頁目のエンボス加工証印を提示します。最初の年金納付前に特許証原本を破棄すると裁判所からの特許証提示要求に応じることができないという範囲でリスクがあるため、もし破棄する場合は最初の年金納付後に行うことを推奨します。

2.特許証を電子データで発行する国

カナダノルウェーロシアインドシンガポールフィリピン中国韓国台湾オーストラリアニュージーランド、サウジアラビア湾岸協力会議(GCCブラジルメキシココロンビア米国、ユーラシア特許イタリアスイス、アルゼンチン、チリ、アラブ首長国連邦

昨年は上記1(2)だった青文字の国は今年に入り電子データの発行を開始しました。米国は特許料納付から特許証発行までの期間が短縮されるため、分割出願やQPIDSの提出は特許料納付時に行うことを推奨します。一定期間は電子データと紙の両方が発行されますが、現地代理人による日本向け紙転送費用が5,000円ほど発生するため、弊所は現地代理人に紙転送は不要と連絡しています。訂正版特許証も2024年1月30日より電子データで発行されます(訂正前の特許証が紙で発行されていても訂正版は電子データで発行されます)。

弊所が本年において特許証を電子データのみ受領した国(赤文字の国)について、現地代理人に各国特許庁は特許証を電子データでのみ発行していることを確認しました(申請により有料で紙の特許証も発行します)。