インド実施報告の対象となる実施期間について

概要
発行月
2023年8月
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概要

インド実施報告(Form 27)の本年提出分(提出期限:2023年9月30日)に関し、一部現地代理人より弊所が提出対象と認識していない案件の提出督促を受領したため、実施報告の対象となる実施期間を複数の現地代理人に問い合わせました。今回はインド実施報告の対象となる実施期間について紹介します。

目次

  1. インド特許規則131(2)
  2. 現地代理人の見解 ※問い合わせ先:15事務所/回答受領:13事務所
  3. 弊所の見解
  4. 速報

1.インド特許規則131(2)

インド特許庁は2020年10月19日付で実施対象の期間とForm 27の提出期限を次のように規定しました。
The statements referred to in sub-rule (1) shall be furnished once in respect of every financial year, starting from the financial year commencing immediately after the financial year in which the patent was granted, and shall be furnished within six months from the expiry of each such financial year.

2.現地代理人の見解 ※問い合わせ先:15事務所/回答受領:13事務所

(1)多数派(10事務所)は、本規則を素直に読むと、「Form 27は特許が付与された会計年度(4月1日~翌年3月31日)の直後の会計年度から各会計年度に1回、その会計年度終了から6ヶ月以内に提出する」と解釈できるとし、2022年3月31日までに付与された特許は2022年4月1日~2023年3月31日の期間の実施状況を2023年9月30日までに報告する必要があると考えます(一般に認識されている実施期間)。

(2)残りの3事務所は、多数派の見解を否定せず、しかし、「Form 27は特許が付与された会計年度の直後の会計年度から各会計年度に 1 回、特許が付与された会計年度終了から6ヶ月以内に提出する」という解釈も成り立つと考えます。そして、これに従い2023年3月31日までに付与された特許も2023年9月30日までに実施状況を報告することを推奨します。根拠は以下のとおり3事務所でそれぞれ異なります。

①A事務所:本規則下線部分はForm 27を初めて提出する会計年度の明示とも解釈でき、「特許が付与された会計年度の直後に始まる会計年度よりForm 27提出を開始する」と考えます。A事務所はインド特許庁に本規則の見解を求めるも明確な回答がなく、代わりに特許付与直後の9月30日までの提出を勧められました。

②B事務所:2022年3月31日以降に特許が付与された案件において、インド特許庁Form 27提出ポータルサイトで実施期間欄の会計年度の選択肢に”2022-2023”があるため、インド特許庁は特許が付与された会計年度終了後6ヶ月以内に提出することを認めていると考えます。B事務所はこの最初の提出はあくまで任意であり、提出しなくても権利者に不利益(罰則等)は生じないと考えます。

③C事務所:実施報告の制度趣旨がインドにおける特許発明の適正かつ迅速な実施を促すことを重視すると、Form 27は特許が付与された会計年度の一部期間だけであっても提供されるべきと考えます。


黄色の会計年度中(例えば★印のタイミング)に特許が付与された場合、多数派は黄色の直後の水色の会計年度終了から6ヶ月となる緑色の9月30日までにForm 27を提出すると考えます。少数派は黄色の直後の水色の会計年度がForm 27を提出する最初の会計年度と考えて水色の9月30日までの提出を推奨します。

3.弊所の見解

インド特許庁は特許が付与された会計年度終了直後の9月30日までにForm 27が任意提出されることを許容していますが、本規則に関し正式な見解を公表していません。安全サイドに立ちこのタイミングでForm 27を提供することは可能ですが、弊所案件においてこのタイミングでForm 27を提供しなかったことに対して何か不利益が生じたことはありません。本件に関する裁判所の判断やインド特許庁の正式な見解の公表など本規則解釈の明確な決定がない限り、弊所は一般に認識されている実施期間に従いForm 27提出管理を行います。

4.速報

インド特許庁は2023年8月22日付で特許規則改正案を公表しました。131(2)は本案において次のように「各会計年度に1回提出」から「3会計年度に1回提出」に変更されています。
The statements referred to in sub-rule (1) shall be furnished once in respect of every period of three financial years, starting from the financial year commencing immediately after the financial year in which the patent was granted, and shall be furnished within six months from the expiry of each such period:

本案は「Form 27は特許が付与された会計年度の直後の会計年度から3会計年度に1回、3会計年度目の終了から6ヶ月以内に提出する」と読み取れ、現行規則とは異なりperiodを用いることで実施期間と提出時期を明確に区別して混乱を避けたいインド特許庁の意向を窺うことができます。本案がそのまま施行された場合、例えば2025年3月31日までに付与された特許は2025年4月1日~2028年3月31日の期間の実施状況を2028年9月30日までに報告することになります。※改正案は他の項目も含め別途改めて紹介いたします。

現行規則が変更されるまでは上記3に従い目前の2023年9月30日期限の対象案件を管理します。